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>2016 7/16,17,18(土,日,月祝)『総義歯ライブ実習コース』開催されました ※歯科技工士の観点からのレポート
今回『総義歯ライブ実習コース』レポートをお願いしたのは、Weber dental labor 歯科技工士 石川太一先生です。
歯科技工士の視点から、技工サイドでのテクニック・製作方法をメインにレポートをお願いしました。
上下顎同時印象法によるシュトラックデンチャーがどのようにしてでき上がるか、歯科医師の先生方においても、技工サイドの仕事を学べるような内容となっておりますので、ぜひ読んでいただけると嬉しく思います!(IPSG事務局 稲葉由里子)
毎年夏の三連休に行われる本セミナーは、三日間で患者様の問診から義歯装着までを行うといった斬新かつ挑戦的なものでした。
また今回、例年と最も異なる点は、新しく設立いたしました歯科技工所、Weber dentl laborにおいて、義歯の咬合調整、重合、研磨、完成までを見ることができるという新しい試みを実践するということでした。
この試みにより、普段はあまり表に出ることの少ないラボサイドの仕事を、先生方により深く理解していただけたかと思います。
まずは三日間の実習の流れをご紹介いたします。
■一日目
・問診
・診査(口腔内 顎関節 唾液)
・スタディーモデル印象
・咬合器付着
・個人トレー用意
初日は、稲葉繁先生による講義の後、患者様が来院され問診後、各種診断を行いました。
型を採取後、上下顎の歯列・顎関節・頭蓋との位置関係を記録し、でき上がった模型をトリミングして個人トレー制作に移ります。
■二日目
・個人トレーの試適、調整
・上下顎同時印象
・作業模型製作
・人工歯排列
・ロウ義歯試適
二日目は、初日にでき上がっている個人トレーの下顎に、素材となるパラフィンワックスを二枚分張り付けるところから始まり、印象材にかかる圧力を均等にした後、患者様の来院・個人トレーの試適・調整に移ります。
この後の技工操作はIPSG技工インストラクター小平雅彦先生に行っていただきましたが、熟練した技術と、幅広い知識には目を見張るものがありました。
上下同時印象の模型は、咬合器装着が終わるまで印象から模型を抜くことがないので、できるだけきれいに石膏をつぐ必要があります。
その後、石膏コア制作の後、人口歯排列、歯肉形成を行っていただきました。
歯肉形成終了後、ロウ義歯試適を行います。
この時点では、審美的な見え方、正中の位置、咬合高径、発音などを精査します。
そしていよいよ最終日です。
■三日目(最終日)
・ラボにて咬合調整
・埋没、重合、完成
・装着前の確認、調整
・新義歯装着
最終日は、初の試みとして、Weber dental laborにて技工作業を見学いただく先生方と、IPSG研修会場で稲葉繁先生と岩田光司先生の講義を受けていただく先生方とに分かれて、二か所で同時進行していくという形になりました。
これより後のレポートは、Weber dental laborでの技工作業の模様をお伝えします。
最初はみなさん初めてのことばかりでしたので緊張の面持ちでしたが、時間が経つにつれ場の雰囲気も和らぎ、緊張感がありつつもリラックスした空気感がありました。
ご質問も多くいただき、非常に有意義な時間を過ごしていただけたかと思います。
ロウ義歯を焼き付けた後、咬合調整を行いました。
細心の注意を払って一次埋没?三次埋没終了後、流ロウします。
今回は重合時間を1時間半程とりました。
放冷後、割り出しと研磨を行います。
義歯の最終研磨はIPSG認定技工士 中沢勇太先生に行っていただきました。
最終研磨を終えた完成義歯です。
典型的なシュトラックデンチャー(総入れ歯)です。
急いで、IPSG研修会場へお届けしました。
稲葉繁先生による装着前のチェックの後、新義歯を装着していただきました。
患者様の笑顔が物語るように、審美性、機能性、どれをとっても申し分ない義歯ができ上がっていました。
今回おもしろいアクシデントがありました。
患者様が今まで使用していた義歯が、実は故 岡部宏昭先生が作られた義歯だったのですが、その上下義歯と今回小平雅彦先生が新しく制作した上下義歯を一緒にして、稲葉繁先生がシャッフルしたのです。
すると、ほとんど同じ形の義歯だったため、どれが新義歯か旧義歯かが判別できなくなったのです。
もちろんよく見れば判別できるのですが、それぐらい二つの義歯は酷似していました。
これはひとえに、稲葉繁先生が考案されたこの上下同時印象における総義歯製作法が、いかにシステマティックに構築されたすばらしい技術であるかを証明しているものだと思いました。
最後になりますが、今回新たな試みの中、暖かい目で見守ってくださった先生方に、心より感謝申し上げます。
また次回、よりよい内容の講義、実習を目指していきますので、よろしくお願いいたします。
Weber dental labor 歯科技工士 石川太一