まず患者さまに伝えたいことは何ですか？

これまでの入れ歯治療は対症療法的でした。しかし本来は「原因」から解決しないといけません。その原因を解決するために最新の機器を使い、時間をかけていろいろ調べて診断する必要があります。型のとり方から違います。そういう目に見えづらい部分が実は重要で、手間や時間がかかるんです。

わたしが現在ドイツ式入れ歯治療でいただいている費用は診査診断や高度な治療技術などで、昔のように材料のみの費用だけではありません。材料を良くしただけではいいものができるというわけではありませんからね。

保険適応の入れ歯治療とでは見た目は当然異なりますが、機能性も全く異なります。適正な診断と噛み合わせ治療をしないと、癖が残っているため後で顎の位置がずれていってしまう可能性があるのです。顎の位置の診断をして入れ歯で顎を正しい位置に持っていくには時間がかかりますが、後で噛み合わせが変わってずれていくということはありません。「包括的な観点での治療」が重要なのはそういったところにあるのです。

正しい噛み合わせになる入れ歯を作ると、患者さまの血色が格段に良くなっていきますよ。食欲が出てきて、体調も良くなっていく患者さまが少なくありません。噛み合わせを正しくすることが健康に直結しているんですね。歯の治療はその後の健康も含めたトータルで考えるべきだと思います。

入れ歯を特に学ぼうと思ったきっかけは何ですか？

きっかけは20年ほど前のある患者さまとの出会いでした。入れ歯でとても苦労していらして、「先生、いくら費用がかかっても構いません。最高の入れ歯を作ってください。」そう言われました。

しかし当時のわたしはそれに応えることができませんでした。保険適応の治療ばかりしていましたから、費用をかけると言っても良い材料を使うことくらいしか考えられなかったのです。その患者さまのケースは大変難しく機能的な問題があり、もっと全体を診なければいけなかったのですが、その頃のわたしには知識も技術も不足していました。それがとにかく悔しくて。それから入れ歯についての研鑽を始めました。研鑽に研鑽を重ねて、そうして最後にたどりついたのが「IPSG包括歯科医療研究会」だったんです。

入れ歯治療はどのように変わりました？

「IPSG包括歯科医療研究会」では、噛み合わせ全体から顎関節を診ていきます。そのうえで機能的なところから入れ歯を考えます。

それまでは「入れ歯」だけ見ていました。口の中、粘膜の状態だけを見て改善していこうとしていました。元々からある「噛み合わせ由来の視点」はなかったのです。柔らかい材料を入れて、こっちでも噛める、そっちでも噛めるようにしておいて、患者さまが噛みやすいところを見つけるのを待っていました。治したというよりも、患者さまの治る力に頼って、治るのを見守っていたようなものです。噛み合わせにまでは考えが及ばず、顎関節から考える治し方ではありませんでしたから、また何かの拍子でずれてしまうんですね。

「IPSG包括歯科医療研究会」の治療は、いわゆる名人芸的な治し方というよりは、「ここがこうだから、こうすべきだ」ときちんと筋道立てて考える科学的な治療方法です。いまではどういう風に悪くなってきたのかという経緯を含めて診るようになりました。身体がどう歪んでいるか、口の中だけ診るのではなく、変な癖がないかなどの原因追及をします。全体的に診ることで、深い分析・診断ができるようになりました。顎関節の診断はとても重要です。その診断に立って、正しい噛み合わせにこちら側で誘導していくのです。

現在は入れ歯治療のほうが多いでしょうか？

当院は入れ歯とインプラントを専門にしていますので、両方の患者さまが来院されます。最近ではインプラントが怖いという方や、骨がなくてインプラントが出来ない方にはドイツ式入れ歯を選択肢のひとつとして提案しています。また、和歌山の他の歯科医院様が、入れ歯、あるいはインプラントの難しいケースを紹介してくださいます。

良い入れ歯を作るうえでは、診断力や技術力が大切ですね。「IPSG包括歯科医療研究会」の治療は、和歌山では他に類がありません。和歌山だけでなく、大阪や高松、岡山からいらっしゃる患者さまもいます。

ただ、もちろん今でも難しいケースはあります。残っている歯を大事にしつつ作る入れ歯は、方法・設計もケースバイケースでしばしば悩みます。歯がないほうがコントロールは比較的容易ですが、「抜きたくない」という患者さまは多くおられるので、どうすべきかいろいろ考えますね。身体の癖とか、生活習慣病が絡んでいることもしばしば。「IPSG包括歯科医療研究会」の稲葉先生に相談し、最善の方法を患者さまに提供しております。

入れ歯とインプラントのどちらを患者さんにすすめていますか？

患者さま自身の希望を聞きつつ、その患者さまにとってのベストを提案します。インプラント専門の歯科では、ややもするとすべてをインプラントで治そうとしますね。入れ歯は嫌なもの、できるだけ入れ歯にはしたくないはず…という前提での考えです。しかしインプラント治療は金属の歯根を骨の中に埋め込むものですから、埋め込むための骨が必要です。インプラントを支えるための顎の骨が足りない患者さまには、骨を移植するなど大掛かりな手術をしなければなりません。またインプラント治療でも歯が残っていると大変な点が多く、後でトラブルにならないように健康な歯まで抜いてインプラントにする治療も行われています。

わたしは小さな入れ歯とインプラントを組み合わせる治療も多く手掛けています。他の歯科医で「インプラント治療はできない」と言われて、「なんとかできないか」と当院に来られる患者さまもいらっしゃいます。生活習慣病などの身体疾患があるケースなどはインプラント治療ができない場合が多いのですが、「IPSG包括歯科医療研究会」ドイツ式の入れ歯なら、かちっと安定してこれまでの入れ歯のイメージと異なるため、「入れ歯はいやだ」と思われていた方にも大変ご満足いただいております。

今はしっかりした入れ歯治療とインプラント治療双方の見地から、それぞれの患者さまの顎や骨の状態、その他身体疾患の有無、さらには経済面なども含めて考え、適合した提案ができています。

患者さまがリラックスできるように...など医院で工夫されている点はありますか？

5年前に現在の場所に移転したときに、いろいろ考えて新たな医院を作りました。当院は基本的に大人の診療を主にしていますので、全体的に落ち着ける空間にしました。

保険診療も行っていますが、丁寧な問診や検査、診察が必要な治療に関しては、個室を用意しています。そこで治療の説明も行っています。インプラントか入れ歯かどちらか一方だけでなく、組み合わせもありますし、入れ歯でもさまざまな方法があります。もちろん、それぞれリスクもあります。ひとつひとつ丁寧にご説明して、納得していただいた上で、どれがいいか選んでいただきますね。

患者さまが治療の際に座る椅子は、とにかく楽な姿勢で居心地のよいドイツ製を選びました。また、歯を削る機械は機能的で速く削れる機械を導入しました。歯を削る際には摩擦熱がこもりますが、ドイツの機械はその熱をすばやく冷やすための水が大量に出るタイプなので、歯を傷めません。そのため、歯を削った後の痛みを従来よりも大幅に削減することが可能となりました。

診察時間のプライベートタイムなどはどう過ごされていますか？

現在は勉強をすることが趣味かもしれません（笑）。休日はだいたいセミナーなどに行って学んでいますね。

昔はスポーツが好きで大学時代はテニスをしていたので、こちらに来てからもしばらくはテニスをしていましたし、ゴルフも月に1回くらいは行っていました。海が近いので、友人と3人でヨットを共有で購入して楽しんでいた時代もありました。でも入れ歯など、身につけた新しい技術を実際に生かしてやれることが増えてくると、そちらのほうが面白くなってしまいましたね。学生時代は決して勉強好きではありませんでしたが、いまは勉強のための勉強ではなく、実際の患者さまを良い方法できちんと治したいという思いで、日々研鑽を積んでいます。