噛み合わせから考えた治療
しっかり噛める入れ歯は、噛み合わせを重視する治療から生まれます
虫歯や歯周病などお口の中のトラブルのそもそもの原因となるのは、口腔内の細菌と、噛み合わせなどによる歯にかかる「力」です。歯に不自然な「力」が加わると、歯にひびが入ったりぐらついたりし、そこに細菌が感染して虫歯や歯周病が始まります。また、噛み合わせが悪いために歯の表面のエナメル質が傷つき、そこから虫歯になることもあるのです。細菌感染と噛み合わせの両面から治療しなければトラブルは解決しません。
【IPSGの特徴】
入れ歯をはじめ、すべての治療において噛み合わせを重視しています
IPSG包括歯科医療研究会では、噛み合わせを正しく改善しない限り、治療を行っても効果が期待できない場合があることに注目し、入れ歯治療や虫歯治療も、正しい噛み合わせがあってこそ成り立つと考えています。
入れ歯や被せ物の製作でも咬合器が活躍
虫歯の治療に使われる被せ物や入れ歯を製作するときも、噛み合わせの診断に使う咬合器を使います。フェィスボウという機器で計測した精確な噛み合わせのデータに合わせて模型を咬合器に取り付け、そこから被せ物や入れ歯を作ることで、患者さまのお口にぴったり合ったものが出来あがるのです。
咬合器を使うことで審美性も高まります
差し歯やブリッジを製作するときも、咬合器を使用すると治療の精度が高まります。特に前歯は口を開けた時にいちばん目立つため、咬合器によって見た目の美しさにも配慮しながら調整することが重要です。
患者さまの歯型を咬合器に取り付けて、全体のバランスを見ながら作ることで、違和感のない美しさとお口全体にしっくりなじむ差し歯やブリッジに仕上がります。IPSG包括歯科医療研究会がめざす「噛み合わせを含めて口腔全体をトータルに考える治療」により、美しさも機能性も長持ちする治療が完成します。
予防と「歯を削らない治療」だけでは、救えない歯があります
国際歯科連盟(FDI)では、2000年にMinimum Interventionという新しい概念を学会誌で推奨しました。日本でも歯科医療における最小限の介入が叫ばれ、歯を切削することが罪悪であるかのような考え方が広まってきました。
確かに自分の歯で一生を送ることができれば最高の喜びで、誰もがそれを望み、実現したいと願っています。口腔疾患の予防は歯科医院での取り組みも拡がりつつあり、その効果は大きいものです。
しかし一方で、団塊の世代、あるいはそれ以上の年齢の人は、歯の予防という概念がない時代に生まれ育ち、すでに虫歯や歯周病に罹患している人も多いという現実があります。そこで最少の介入に固執するあまり、すでに疾患に罹患している状態をただ静観し、歯の切削は良くないとばかりに何もしないでいたならば、ますます状況を悪くしてしまう結果となります。
【IPSGの特徴】
予防補綴という考え方を提唱しています
虫歯や歯周病により歯をなくし、噛み合わせ(咬合)の崩壊が予測される場合に消極的な治療介入を行うと、少数歯にストレスを集中させる結果になり、最終的には残存歯を徐々に失ってしまうという状況に追い込まれてしまいます。
そのような結果を招かないためには歯の切削を行い、全顎的に歯の固定を行うとともに、咬合の安定を図り、長期に口腔内で機能する補綴を行うべきです。私たちはこれを「予防補綴」と位置づけ、機をみて最大限に介入(Maximal Intervention)する必要があると考えています。
積極的な予防補綴で、QOLの向上をめざします
そこでIPSG包括歯科医療研究会では、これまでに損なわれた残存歯や歯周組織の状態を整え、残存歯を守るような治療を行っています。そして、結果として残存歯が長期的機能できるような方法を選択する「予防補綴」により、多くの患者さまの噛み合わせを守り、生活の質を維持していきたいと考えています。
IPSG包括歯科医療研究会の補綴は、テレスコープシステムの技術を基本とした予防的な補綴です。1度行えば、それ以降は残存歯を悪くしないような治療をめざしています。
IPSGでは噛み合わせを学ぶ取り組みを進めています
【咬合認定医コース】
咬合に関する教育は、大学ではほとんどなされていません。しかし、歯科医師として卒後にもっとも必要とされるのは咬合の知識です。総義歯にしてもインプラントにしても結局は噛み合わせをつくるための手段に過ぎませんから、本来は咬合は最初に学ぶべきものなのです。重要なことは、咬合をどうつくり、いかに健康に関わるかということです。
IPSG包括歯科医療研究会が伝授するテレスコープ義歯も顎関節症治療も、すべて噛み合わせ(咬合)が基本にあります。2016年5月から「咬合認定医コース」をスタートするなど、噛み合わせを重視した治療を行う歯科医師を増やしていきたいと考えています。
入れ歯や被せ物が原因となることも多い顎関節症
最近、顎が大きく開けられない、顎の関節付近が痛いなどの症状を訴える患者さまが増えています。さらに詳しい問診をすると、肩が凝る、腰が痛い、手足がしびれる、耳鳴りがする、片頭痛がひどい、というような症状がみられます。これは顎関節症と考えられます。
従来、顎関節症は20代から30代に多いとされてきましたが、40代以上の中高年にも増えてきています。若い人の場合は歯並びの悪さや、親知らずによる噛み合わせのバランスが悪いことによって起こります。
しかし、中高年からの顎関節症の原因は、歯に被せてある銀歯や詰め物、特に入れ歯による噛み合わせのバランスが合っていないことが原因となることが多いようです。顎関節症の症状がみられる場合は、入れ歯や被せ物によって噛み合わせに不具合が起きていないかを慎重にチェックする必要があります。
次のような症状に心当たりはありませんか。
- 歯ぎしりや噛みしめがある
- 顎のまわりの筋肉が痛みを感じたり、硬直している
- 頭痛や首の痛みがしばしば起きる。また噛みしめた時痛みが増す
- ストレスにより、噛みしめや痛みがいっそう増す
- 口を開いたときパキンと鳴ったり、ぎしぎししたり、口が開きにくい
- 他の関節に関節症のような問題がある
- 噛みしめた時、長く噛んでいられない
- 時々歯の噛み合わせが変わる
- 前歯で噛みしめたり、引き裂いたりすることが難しい
- 歯が過敏だったり、動いたり、割れたり、すり減ったりしている
こうした症状がいくつかあてはまる場合は、顎関節症である可能性が高いと言えます。顎関節症の治療法は、その原因によっていろいろな方法があります。まずはその原因がどこなのか、くわしく調べるところから始まります。